文字通り、矯正力をかけた歯の根の先が治療開始時より短くなることです。矯正治療で歯に力をかける場合に、全ての患者さんに起こりうるものですが、原因がいくつか考えられています。
どうして起こるの?
- 個々の患者さんそれぞれの歯根の形態
→根の先が曲がっている、元々生理的に短かった、先が尖った細い形態(ピペット状)など特殊な形態をしている場合は先端部分の吸収のリスクが高まります - 歯根周囲の骨の構造物(皮質骨などの硬い骨や切歯孔)との位置関係
→歯が骨の中を動いていく過程で、周囲構造物と接触し、吸収する恐れがあります - 予定している歯の移動距離が大きい場合
→出っ歯など、上の前歯を後退させる量が多い等、歯の移動距離が長ければ長いほど、歯根にかかる負担が増加します - アレルギーの既往
→一般的に、アレルギーのある患者さんは歯根吸収を起こすリスクが上昇するといわれています
上記の様々な事柄が絡み合い、歯根吸収のリスクは変わってきます。
起きるとどうなるの?
ほぼ歯根吸収を起こすことなく治療が終了する場合や、根の先が少し丸くなる程度の場合もあれば、歯根の先が1/3程度吸収し、短くなってしまうこともあります。
根の先が短くなる、と聞くと、その歯の予後(寿命)についてどうなるのか、と不安に思われるかもしれませんが、実際のところは「歯が抜け落ちてしまう」「歯の持ちが悪くなる」ということはなく、少し短根歯であっても通常の歯と変わりない状態です。
ただ、周りの骨が急激に痩せてしまうようなひどい歯周病に罹患してしまうような場合は、この限りではありませんので、日ごろから歯磨きや定期的なクリーニング等、こまめにケアをしていくことは大切です。
いずれにしろ、検査の結果、歯根吸収のリスクが高い場合、いかにして最小限にとどめるのか、そのためにはどのような方針をとるべきかを事前にドクターが準備しておき、リスクについて十分に患者さんと情報共有しておくことが大切です。